読んでみた!
「いつやるか?今でしょ!
今すぐできる45の自分改造術!」
著者 : 林修
宝島社
林修さんといえば、有名な予備校講師でありつつ、タレントとしてもテレビで大活躍の人ですが、
その著者の、CMやバラエティであまりにもよく耳にする有名なキャッチコピーをタイトルにした著書、ということで、
いわゆるタレント本のようなものかといった感覚で手に取ってみました。
もともと私はあまりタレント本は読まないのですが、まっとうな予備校講師がTVのバラエティ番組でも活躍して人気を博している、ということで(TV関係者の方ごめんなさい)
この人はだいたいどういう人で、どんな考えを持っているのだろう、と興味が湧いたので読んでみることにしました。
「今すぐできる45の自分改造術!」というサブタイトルがついているに似つかわしく、予想どおり、「知的生き方文庫」系の内容が多く含まれてはいるのですが、
同文庫の常連著者とは違い、初めて本を出版する人っぽく、日頃感じて貯めてきた考えを、一生懸命惜しみもなくすべて一冊につっこんだ、という印象の本でした。
つまり、ベテラン作者にある、一本の線の上で動機から終結までを計算しつくして展開する、という統一感や、読んでいての安心感はいまひとつの感がぬぐえませんが、
各章ごとの表題に対して、著者が言いたいことが豊富にちりばめられていて、その中に琴線に触れる内容をいくつも見つけ出すことができる、という点で、最後までとても楽しめる本でした。
◆第1章 今すぐやるべき基本の習慣
-- できる人の「普通」を今日から取り込む --
学生時代の経験や予備校講師としてやってきた中で、人として信用されることや、人に対して説得力を持つことの重要性を肌でか感じてきた著者が、
普段の生活の中においても、また企業の中で働く中でも、ぜひとも持っておくべきだと考えている習慣を、節ごとに列挙しています。
具体的には、誰にでも平等に丁寧な挨拶をすること、歩きながら常に考える習慣、人への質問の仕方、考えをまとめる上での「対比」の有効性などを、わかりやすく説いています。
この中でも特に面白かったのが、「表情力をアップせよ」という節でした。いくら顔つき、顔立ちが麗しくても、表情が乏しいと魅力に欠ける、
そして表情は自分で演出できるしするべきものだと説き、人に見える自分の印象を変えて魅力的な自分を演出することが社会力評価のアップにつながる、と述べ、
いかにも見る人あってなんぼの予備校講師かつ芸能人らしい切り口での見方を披露しています。
ちなみに、表情力アップのスローガンとして「目指せ!柳原可奈子さん!!」と書いていたのですが、私はその人がピンとこなかったので、ネットで検索してみました。
勝手にイメージしていた女性像とはずいぶんと違いました・・・・・。
◆第2章 今すぐやめるべき無駄な行動
-- 自分を見直す絶好のタイミングは今! --
◆第3章 逆算の哲学
-- ゴールを見極め、そこからの引き算を考える --
第2章に書かれている、いわゆる”べからず集”や、第3章に書かれている、ゴールから逆算しての今なすべきことの実行、などは、
いずれも、何かの本やどこかの講演で一度は目や耳にしたことのあるようなもので、特段目新しくはありません。
ただ、著者自身の経験を背景とした、鋭い切り口での展開がなされているので、今一度認識を新たにするにはよい章だと思います。
例えば、著者が授業でよく言う、と述べている「友だちは少ないほうがいいよ」というアドバイス。
互いに理解しあえて尊敬できるわけでもない、なんとなくの友達に時間を奪われて一人で過ごす貴重な時間を無駄にするようなことはするな、
一人の時間を謳歌して「考える人」になって悩んで悩んで歳を重ねるうちに、「堂々たる一人」になって、必然的に自分の周りに人が集まってくる、といった具合です。
◆第4章 権威トレンドをとらえろ
-- 正しいことを言っても伝わらないのはなぜ? --
相手に伝えるために必要な態度やスキルについて、一つの章をわりあてて著述しています。
予備校講師という本職にしても、いま輝かしい活躍をみせているタレントの仕事にしても、「伝わる」ということに成功しなければなりたたない立場の著者が最も得意とする領域といえそうです。
本書をビジネス書としてとらえた場合には、この章は有用な知識が多く盛り込まれている、と思います。
◆第5章 自分の判断基準を一度リセット
-- できないことはできる人に任せる --
この章は「こだわり」という、大事でもあるし邪魔にもなる概念について一章を充てて、著者の考えを述べています。
捨てるべき「こだわり」と譲れない「こだわり」についての論述です。
ところで、この章の骨子である「こだわり」からはすこし逸れた感はありますが、2ページだけですが、「プレゼントにおける判断基準」という節があります。
相手が本当に喜んでくれるプレゼントを贈ることの難しさ、そしてプレゼントの魅力はその人自身の魅力に完全に比例する、と記述されています。
実はたまたま私は、この本を読んだ直後に、お世話になった同僚が退職するというので何かしたいな、と思ったのですが、
この2ページの記載を頭に置きながら、いままで意識もしなかったほどに難しさを感じながら餞別の品を選び、手渡してきました。
自分の「こだわり」を押し付けて、あげた自分に満足しただけに終わってしまったのか、本当に喜んでもらえたのかは、わかりません。
◆第6章 流れをとらえる眼を備える
-- 僕自身の人生を振り返りながら --
この章は最終章ですが、ここまで読み進んできて、この章が最も独自性があるのではないか、と感じています。
著者がこれまでギャンブルに多くのお金をつぎ込みながら学んだこと、好きな麻雀から得ることができた能力などを面白く著述しています。
理屈では説明できないような「流れ」をとらえる眼、そしてその流れは必ず変わるのだということを理解することの重要性についても詳述しています。
いい流れが来ている、と思ったときには、大胆に攻勢に出ること。ただし、酔わず、驕らず、浮かれず。
また悪い流れにあるときは、決して眼の力を失うことなく、何か変化はないかを鋭く観察しながら、じっと耐えること。
焦らず、腐らず、諦めず、誠実に目の前の仕事をこなしていく、としています。
孫氏の兵法にある「勝ち易きに勝つ」、の生き方については、人それぞれ賛否あるでしょうが、筆者自身はこの道を選んで歩んできており、
流れを見る眼を決して曇らせることなく、悪い流れには耐え、いい流れをつかんで今の位置に立っています。
私自身は「勝ち易きに勝つ」には懐疑的、というより、なかなか自分にはできないな、と感じているところですが、
著者がその哲学を実践し、思慮をめぐらせながら行動し、成功していることに、賞賛の感が湧いています。
◆全体として
第1章から第6章の本論のほかに、各章のおわりには『「今でしょ」の「今」を考えるコラム』として、本章には載せきれない著者の書きたいことが綴られています。
冒頭にも書いたとおり、とにかく著者の思いを詰め込めるだけ詰め込んだ、という印象の本ですが、著者自身の幅広さと表現力のおかげで終始刺激的で面白く読み終えることのできます。
タレント本(本書はタレント本ではないが)をあまり好まない私が言うのも変な感じですが、テレビで見る著者を思い浮かべながら読み進められる点でも、想像が膨らみやすく楽しみやすい一冊かと思います。
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