「音階とは?」と聞かれれば、ほとんどの人は「ドレミファソラシド」と答えると思います。
学校でもそのように習ったし、何も疑問をもたないのが普通です。
しかし、日本の昔からの曲には、そうでないものもあります。
ごあいさつが遅れました。こんにちは、みどるさなぎです!
一般的な西洋の音階である「ドレミファソラシ」(『七音音階』)に対して、より少ない音で曲を構成する、『五音音階』というのがあります。
日本の昔からの音楽では、しばしば、この音階が使われてきました。
この五音による響きが、音楽に独特の風合いを与えてくれます。
この記事では、『五音音階』について解説します。
音階について ・・・普通は『七音音階』
現代の普通の曲の音階は、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の7つからなる音階でできています。
曲の中では半音も使われますが、基本の構成はこの7つですね。
ピアノでいうと、鍵盤の繰り返し単位一つ分、順番に白鍵をたどったものです。
話を簡単にするために、ハ長調で説明しています。調が変われば黒鍵も登場しますが、ここでは置いておきましょう。
で、この「ドレミファソラシ」の、明るい感じの音階を、『長音階』といいます。
長調の音階で、「長音階」ですね
同じく白鍵だけで音を並べるものでも、ラから始まると暗い感じになります。
これを『短音階』といいます。
長調であれ、短調であれ、曲を構成する基本要素としては、オクターブの中が七つの音からなっています。
これを『七音音階』といいます。
前者が七音長音階、後者が七音短音階ですね。
ちなみに、冒頭に、「現代の普通の曲の音階は・・・」と、あえて「普通の」という言い方をしました。
わざと複雑な音階を駆使した、前衛的な作品もあるにはあるからです。
ただ、これらの多くは一般的でもなく、響きも馴染みにくいため、あえて言うなら「特殊効果を狙ったもの」です。
日本の古くからの音階 ・・・五音音階
それに対し、古くから伝わる民謡などでは、音階が5つの音しかないものが存在します。
5つの音から構成されている音階を『五音音階』といいます。
難しい言葉では、「ペンタトニックスケール」と呼びます。
五音音階にも複数の種類があるのですが、日本中で広く普及したのは、『ヨナ抜き音階』と呼ばれるものです。
日本の古くからの伝統的な音楽には、この『ヨナ抜き音階』が多く使われています。
「ヨナ」ってなんだ?
冗談みたいですが、ヨは4(よん)の「よ」、ナは7(なな)の「な」です。
「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」のうちの、4番目のファと、7番目のシを抜いて、「ド・レ・ミ・ソ・ラ」でできた音階、それが『ヨナ抜き音階』です。
ハ長調で説明していますが、何長調であれ4番目と7番目を抜いたら、それがヨナ抜き音階です。
『ヨナ抜き長音階』と『ヨナ抜き短音階』
五音音階にも、あかるい長調の曲を作る「長音階」と、暗い短調の曲を作る「短音階」があります。
長調の七音音階である「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の、ヨ(4)とナ(7)を抜いた、「ド・レ・ミ・ソ・ラ」が『ヨナ抜き長音階』です。
「ペンタトニック メジャー スケール」というやつです
一方、短調の七音音階である「ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ」の、ヨ(4)とナ(7)を抜いた、「ラ・シ・ド・ミ・ファ」が『ヨナ抜き短音階』です。
「ペンタトニック マイナー スケール」というやつです
わかりやすくするために、「#」も「♭」もない、ハ長調とイ短調で説明していますが、どの調でも基本は同じです。
ヨナ抜き長音階の例 『函館の女』
『ヨナ抜き長音階』を説明するのに一番シンプルなのが、北島三郎さんのヒット曲『函館の女』です。
はるばるー、来たぜ、函館へ~~~ ってやつですね。
これに、階名と番号をふりましょう。
ピアノの鍵盤をおさえていきましょう。
このように、「ド・レ・ミ・ソ・ラ」 の5つの音でできています。
②と⑥(ニとロ)が抜かれているのがわかりますね。
ヨナ抜き短音階の例 『さくらさくら』
長音階以上に、「この響き、しっくりくる」と感じやすいのが、短音階のほうかもしれません。
「さくらさくら」で見てみましょう。
これも同じように、階名と番号をふってみましょう。
ピアノの鍵盤をおさえるとこのようになります。
「函館の女」での説明のように音が一方向に並んでいないのでわかりにくいかもしれませんが、確かに、「ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ」のうちの四番目(レ)と七番目(ソ)がない、ヨナ抜き音階「ラ・シ・ド・ミ・ファ」で構成されています。
もうひとつの五音音階「琉球音階」
実は日本にはもう一つ、有名な五音音階があります。
それが「琉球音階」です。
「ニロ抜き音階」と言って、「ド・ミ・ファ・ソ・シ」からできています。
「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」のうちの、2(ニ)番目のレと、6(ロク)番目のラを抜いた音階、それがニロ抜き音階です
異国情緒あふれる、独特の響きを持っています。
これについては、別の記事で詳しく解説していますので、よければご覧ください。
実は頻繁につかわれている「ヨナ抜き音階」 名曲も多数
普段あまり意識しませんが、注意して分析してみると実は「ヨナ抜き音階だった」という曲は、実はたくさんあります。
ヨナ抜き長音階の曲
古くからの民謡や盆踊り、文部省唱歌などでは、ヨナ抜き長音階は多いですね。
- 河内音頭(エヤコラセ、ドッコイセというやつです。関西人なら知ってますよね?)
- 炭坑節(月が出た出た、月がでた・・・)
- 茶摘み(夏も近づく八十八夜・・・
- 赤とんぼ(夕焼けこやけの・・・)
- ぞうさん(・・・お鼻がながいのね・・・)
童謡では挙げ始めるとキリがありません。
民謡だけでなく、歌謡曲にも多く登場します。
一例を挙げるだけでも、次のような名曲があります。
- 「王将」(村田英雄)
- 「上を向いて歩こう」(坂本九)
- 「北酒場」(細川たかし)
- 「昴」(谷村新司)
- 「知床旅情」(森繁久彌)
挙げれば挙げるほどいくらでも出てきます。
古い曲ばかりじゃないか」と言わないでくださいね。
- 「恋するフォーチュンクッキー」(AKB48)
なんかもそうですよ。(十分古いか・・・・)
ヨナ抜き短音階の曲
- 砂山(海は荒海・・・ 山田耕筰作曲の方です)
- 子守歌(ねんねんころりよ・・・)
- うさぎ(・・・なに見て跳ねる・・・)
但し、ポロポロと「ヨ」(四=レ)は混ざりますけどね・・・
土台が五音から成っていて、臨時で「ヨ」や「ナ」が出て来ることはしばしばあります。
演歌はヨナ抜き短音階の曲は多いですよ。
- 「悲しい酒」(美空ひばり)
- 「おもいで酒」(小林幸子)
- 「北の漁場」(北島三郎)
日本だけではない「ヨナ抜き音階」
五音音階は日本だけのものではありません。
世界中のあちこちの民族音楽にもみられるようです。
有名な作曲家がクラシック音楽に取り入れたりした形跡もありますね。
「ヨナ抜き音階」として有名なものには、あの、『蛍の光』があります。
この曲は、日本では自分の国の歌のように有名ですが、元はスコットランド民謡です。
スコットランド民謡といえば、『故郷の空』という曲も、ヨナ抜き音階です。
『麦畑』といったほうが、ピンとくるかもしれませんね。
黒鍵だけで弾いてみよう
余興ですが、ヨナ抜き長音階の曲は、ピアノの黒鍵だけで弾けます。
音の並びが、ピアノの黒鍵と同じなのです。
先ほど出てきた「函館の女」で試してみましょう。
楽譜にするとこんな感じ。
なんだかシャープがいっぱい出てきて難しそうですが、弾くとこうなります。
本当に、黒鍵だけで弾けますね。むしろ、ハ長調より簡単そう・・・・。
まとめ なんかしっくりくる「ヨナ抜き音階」
五音音階の「ヨナ抜き音階」についてご紹介しました。
5つの音だけだけれど、きっちりと曲になっているし、むしろ無駄なく完全な感じすらします。
違和感なく、しっくりくる理由は、童歌や民謡で知らず知らずのうちに耳にしつづけてきたせいかもしれません。
この音階がもつ雰囲気が、僕たちの体にしみついているのかもしれませんね。
では、またっ!
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