読んでみた!
「定年まで待つな! 一生稼げる逆転のキャリア戦略」
著者 : 成毛 眞
PHPビジネス新書
正直なところ、読み進める途中で、この本はもういいかな、読むのをやめて次の本に移ろうかな、
と思ったのを、思い直して最後まで読んでよかったな、という本でした。
会社勤めを経て、米国有名企業の日本法人の社長にまで上り詰め、中年にさしかかった頃にあっさりと辞めて、自分の会社を設立して成功しておられる
真の意味での実績ある実業家らしく、前半は冷静な社会分析から始まります。
◆第一章 老後に野垂れ死にたくなければ、一刻も早く会社を去れ
この章では、確実に来る高齢化社会、医療費の自己負担の大幅増、消費税の大増税、
インフレによる貯蓄の実質的な目減り、AIの普及による中高年労働者の価値減少など
今後確実に起こるであろう社会の変化に対して、
中高年世代の危機感があまりに低いことを指摘し、数字を交えて理論的に説明しています。
そして、この先どうするべきか、については、
「いまの会社をとっとと辞めて、長い間、稼ぎ続けられる職場を見つけ出す」ことを提案しています。
早期退職制度などが導入された場合には、大チャンスとみてなんとしても掴み取れ、とアドバイスしています。
この章の著述においての危機感のあおり方には、私は少し性格的にあわないものを感じはしましたが、
「これはやばいぞ」という点においてはまったくもって同意見でした。
◆第二章 スキルアップする暇があったら地方に飛び込め!一発逆転の転職術
◆第三章 語学は後回しでいい。さっさと海外で働いてしまえ
この二つの章では、学生のときのような発想で勉強したり資格をとったりしてから転職する、
などということをモタモタやるのではなく一刻も早く行動を起こせ、ということが書かれています。
そして、プライドを捨ててダウングレードすること、や、日本国内で働くことにこだわらず、海外で働くことに目を向けることも提案しています。
その上で、地方の温泉旅館や、飲食業、造り酒屋、といった、著者からみたポテンシャルの高い働き先を具体的に紹介したり、
海外に住むならどこがいいか、についての著者なりの意見が述べられています。
ところで、私がこの本を最後まで読むことを途中で放棄してしまいそうになった原因として、
第一章で繰り広げられる、あまりに悲観的な現実の直視に少ししんどくなってしまったことと、
第二章と第三章の中での論理展開における、いくらかの違和感が挙げられます。
例えば、MBAなんかとっても起業家としてはしょうがない、という考えの著述において、ビルゲイツやスティーヴジョブスなどの、超稀な成功者を例にして、
「成功者にMBA取得者がいない」、としているところなどの、ちょっとした論理展開の乱暴さです。
海外で活動するなら何処がよいか?についてのくだりも、著者の個人的な偏見がおおきいように思え、同調できない部分がありました。
ただ、それはあくまで、私がMBAや起業や海外移住をまだ本気で考えておらず、斜め上から読んでいる中での感想であり、
すでに中高年の今後の危機を深く認識して、著者にならってキャリア変換の道をさぐりはじめている人が
職業や場所を見つけるための一助としてこの本にたどりついた場合には、この第二章と第三章はとても意義を与えてくれるだろう、とも思いました。
さて、私としてはここまでで、読み続けるのが厳しいぞ、と何度か感じつつ、読み飛ばしながらなんとか耐えて、
次の章に移ったところで、急に読み続けたよかったと思う展開に入りました。
◆第四章 会社を辞められないなら、一つの趣味に全力を傾けよ
この章で、私のこの本に対する興味と共感が急速に湧きました。
好きなことを趣味にして打ち込んでいるうちに、新たな収入源を確保することにつながる、という運びです。
まあ、実際にそれを断言されたところでそのまま鵜呑みにできるわけではもちろんないのですが、
想像力をかき立てられて将来に対しての希望がわきあがる章になっています。
盆栽で一つにつき100万円単位の収入が得られる、とか、メダカの育種で一匹1200万円の値が付くとか、
事例の中には、共感どころか胡散臭く感じてしまうものも少なくないのですが、
プラモデル制作、コレクション、食べ歩き、音楽、文章、写真、陶芸、といった、いわゆるありきたりの趣味を取り上げながら、
それに少しひねりを加えることで収益源になりうる、ということを実例も上げて紹介してくれています。
そしてなによりも「好きなこと」「楽しいこと」であることが大前提である、とされているのですが、
ミドルエイジからシルバーに入っていくにあたって、好きなことを見つけて磨いていきたい、と日々感じつつある私にとって
こういった実例とアイデアには勇気づけられ、ワクワクした前向きな気持ちにさせてくれるものでした。
そしてひとかどのものになろうとすれば、3000時間を費やすべき、(逆にそれだけかけたらモノになる)という考えは
何か変わろうとしている自分の背中を押してくれているように感じます。
◆第五章 勤めながらでもOK!超速で自分の会社を設立せよ
第四章からのつづきで、今度は自分がコレ!と思った商品を仕入れてメルカリやヤフオクで転売することを説いています。
商売と思ってやるか、趣味の延長と思ってやるかで、リスクの背負い方や楽しみ方に差異がでると思いますが、
第四章以降は、リスク回避をとりながら、新しいことを楽しみながらチャレンジする、というタッチで描かれていますので、
商品を見つけ出してくることに楽しみを見出しながら収益も得る、という立ち位置で読むと、これからの人生の楽しみに期待が高まります。
この章ではさらに、一円での会社設立や起業のときの注意点、心構えなどにも触れています。
しかし、基本的には楽しみながら、という姿勢で貫かれており、「サイドビジネスの種は家族や恋人と出掛けながら見つける」
という節が印象的です。これこそ、私が今後の自分の生き方の中で求めているイメージにピッタリでした。
◆第六章 自分を縛りつける「壁」を壊して、賢く生きろ
とにかく、冒頭から述べられてきた、いまのままでは老年を迎えたときに大変なことになる、の論調の締めとして、
旧来の価値観や固定観念をすてること、また、それまで大事だとか必要だと思っていたものをもう一度考え直せ、と説いています。
例えば持ち家が資産だという考え方、広い家そのもの、都心近くでの暮らし、子育てにおける高学歴信仰など。
面白い生き方の一例として、家や賃貸マンションそのものを売り払って豪華クルーズ船に暮らす、ということも、
フツーの人でも無理ではない、ということを、実際にそれをしている人を紹介しながら提案しています。
これは、考えたこともないことでしたし、具体例をあげてもらうまでは非現実的ときめつけてしまうものでしたが、
少し、目から鱗が落ちたような衝撃でした。
そして、この本の最後として、「自身の価値観を見直し」てみて、「その呪縛から自分を解き放つ」ことによって
「人生に明るい展望が開けて」きて「何より、生きることがラクチンになる」と締めています。
先述したように、タイトルを見てこの本に手に取り、求めたものは、おそらく人によってまったく違うので一概には言えませんが、
私の場合は、ミドルエイジとなった今、この先をどう人生設計していこうかと漠然と考えている中にあって、
いろいろなヒントや刺激を与えてくれた、という点で、よい本を読めたと思っています。
私と同じようなタイプの方々には、楽しく読む(特に後半)という意味で、おすすめしたい一冊です。
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