【読んでみた!】「すべて投げ出していまいたい」と思ったら読む本 (諸富祥彦)をご紹介します!

読んでみた
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「すべて投げ出していまいたい」と思ったら読む本
 著者 : 諸富祥彦
 朝日新聞出版

人は人生で3度、すべてを投げ出してしまいたくなる。

10代後半から20代の、いわゆる、子供から大人に変わる時期
70代から80代の、気力体力ともに衰えを目の当たりにして著しい喪失感を感じる時期

その2つの時期のあいだに、一番最も深刻なものとして、40代から60代、いわゆる中高年の時期、がある。(本文より)

みどるさなぎ
みどるさなぎ

ごあいさつが遅れました。こんにちは、みどるさなぎです!

僕自身、50代がみえてきたあたりから、この先の人生、どうしてゆこうか、を不安とともに考えることが多くなっていました。

定年退職のあとの老年の生き方、それにむけてのこの先10年あまりの過ごし方、それを見据えたときに、今の自分はどうなのだろう、と。

40代から60代の人が背負っているものは、とても多くて、とても重たいです。

  • 職場や家庭での役割
  • お金のこと、
  • 自分の老親のこと
  • 体力や気力の減衰
  • 閉塞感
  • それらからくる「すべて投げ出してしまいたい」という欲求
  • 「人生の意味ってなんだろう」という焦りや不安

そうしたものを踏まえながら、出口のない長いトンネルどう対処するかを一緒に考える、というのが、この本のスタンスです。

ところで、僕が、この本を手に取ったのは、タイトルに興味をもって、のことです。

確かに、「すべて投げ出していまいたい」と思ったら読む本 って、なかなかキャッチ―なタイトルですね。

その観点で本全体を見た時、重みは前半の著述にあります(後半は後半で、また別の観点からは深いですが)。

なので、以下に記す僕の評も前半中心になっています。

1章 すべてを投げ出してもいい

投げ出す

章のタイトルからしてストレートに、「投げ出す」ということを、とてもポジティブに提唱しています。

40代から60代は、自分の人生に疑問を持ち始める、いわば「人生の午後」です。
この時期において、多くの人は、あまりにも多くのものを背負っています。

投げ出すことができないがんじがらめの中で苦しんでいる、という現実に対して、こう言っています。

すべてを投げ出してしまいたい、そういう気持ちになったら、すべきことはただ一つ逃げなさい

世界は回っている

あなたがすべてを投げ出しても、世界は回っています

「世界は回っている」は、まさにそうなんですよね。

僕もかつて、大きな失敗をして、身も心も憔悴しきって、家にこもってしまったことがあります。
その時の恩師に「いいから、とにかく一回出てこい」と、半ば強引に呼び出されました。

なんとか家を出て、呼ばれたところに向かうべく電車に乗りました。
そのとき眼に入ってきた、周りの人々の様子で、不思議な、大きな驚きに直面しました。

みどるさなぎ
みどるさなぎ

当たり前ですけど、みんな普通だったんです。

「自分がこんなに絶望的になっていても、何にも関係なく、いつもどおりに地球は回っているんだ!」
冷や水をぶっかけられたような驚きでした。

逃げる

あと、逃げる、ということに対して、「若い世代から学べ」と書いているところが面白いです。

いまの若い人たちは、できないことを(場合によってはできることでさえも)すぐに「できない」と言う、と。

みどるさなぎ
みどるさなぎ

僕の職場の若いヤツも、かなり簡単に「ジブン、無理なんで。」って言うよ。

僕たち中高年が、それとまったく同じをやるのは無理がありますが、「彼らからちょっとはこれを学んだら?」とこの本では言っています。

あと、「本を読むエネルギーが残っているうちに、逃げよ」と言ってますね。この本を読んでいる私たちに向かって。なんと逆説的か・・・。

2章 心の穴を見つめよ

ビクトール・フランクルというオーストリアの精神科医が説いた「実存的空虚(心の穴)」というものを紹介しています。

さらに、「慢性の」実存的空虚「退屈型の」実存的空虚について述べています。

特に大きな悩みがあるわけではなく、けれども、何かむなしい。つまらない。
自分には大切な「何か」が欠けている。というものです。

みどるさなぎ
みどるさなぎ

それは、僕も日々感じています。

もちろん悩みは悩みでいろいろたっぷりあるのですが、今現在、人生を脅かすような脅威にさらされているわけではないのです。

にも関わらず、この「欠けている」感は間違いなく僕の心を浸食しつづけています。

3章 孤独力を深める

上記の実存的空虚 に対して、次のことを提唱しています。

  • うつの日があったらうつのままでいること。
  • 自分の人生が無意味に思えたら、無意味さを味わう時間をもつこと。
  • 中高年こそ、一人自分を見つめる心の旅に出ること。

例えば、キリスト教圏では、教会に行って静かに自分自身と向かい合う時間をもつ、という機会をもつことができる人々がいます。

日本人はなかなか、そういった機会がない人の方が多いと思います。
それでも、1日10分でもいいから、ネットとのつながりも切って、自分の中に入っていく時間を自分に義務付けることが大事、と説いています。

4章 自分の心の声を聴く

聴く

そうして、次に、ゆっくりと自分の心の声を聴くこと、と薦めています。

人は気づかぬうちに「自分」を失っていく生きものであるが、「自分」を失っているときだけは、人はそれに気づかないまま日々を生きしまっていものなのだ、との警告です。

普段、人は何かを失うということにはとても敏感であるにも関わらず、です。

取り戻す

そして、「自分」を取り戻そうとする際に大事なことは、まわりから自分に与えられた「役割」をいったん手放すことが必要である、としています。

自分を取り戻しますか?それとも自分を見失ったまま、役割をこなすがんじがらめの生活を続けますか?

みどるさなぎ
みどるさなぎ

 ・・・・・

「普通」も「理想」も手放す

心の声を聴く、というときのポイントはまた、「普通」であろうとすることを手放すことである、とも言っています。

ここでいう「普通」などというものは、もともと実態として存在しない、幻想にすぎないです。

「理想の自分」なるものを持たない、ということも大事です。

「理想の自分」であろうとし続けるがゆえに、いつまでも「現状の自分」を否定せざるを得なくなります。

「努力すれば理想の自分になれる」というのも幻想にすぎず、人生というのは「真っ黒」でもないけれども「真っ白」でもない。
グレーゾーンを絶えずうろついているのが現実の人生だ。
そしてそれを自分のこととして受け入れるのが、大人として心が成熟していくということだ、と述べています。

みどるさなぎ
みどるさなぎ

むぅぅ・・・。深いし、考えさせられる。

「成功/不成功」も「過去/未来」も手放す

さらに、他社からの承認を得たいという欲求や、「成功」「不成功」という横軸を捨てること。
また、「過去」はもちろんのこと「未来」に心を支配されるのをやめ今この瞬間を生きること、を説いています。

みどるさなぎ
みどるさなぎ

価値観の根本的な棚卸しが必要そうです

心の空きスペース

そして、本当にしたいかどうかわからないことは「しない」と決め、「心の空きスペース」をつくること。

みどるさなぎ
みどるさなぎ

「トゥドゥリスト」ならぬ「ノットトゥドゥリスト」を作ることを推奨していますね。

さらに「心の空きスペース」を作るためのポイントとして、日常あれこれと考えることによって我々が流されている時間の流れを止めること。
そうした、止まった時間をもつことが自分らしく生きるためには必要であるとしています。

日常的な時間の流れがとまったときだけ、人は、一人静かに自分を見つめ、自分の心の声に耳をすますことができます。

語りかけずに待つ

その際、「考える」を止めることはもちろんのこと、自分自身に何かを語りかけることもやめます
そして、自分の内側から何かが聞こえてくるのを待つのだそうです。

みどるさなぎ
みどるさなぎ

「フォーカシング」という言葉で呼んでいます。

5章 すべての苦しみには意味がある

6章 あなたの人生に与えられた「使命」とは?

これらの章には、悩んだ末の答えにつながるヒントがちりばめられていると思います。

行きつくところはココ、ということに多くの場合なるのかもしれません。

ただ、僕の場合は、この2つの章に書かれている内容は、別の機会で、宗教的な側面から入ってきたものをもっています。

この本を読んで得たこと感じたことからは、若干かけ離れてしまうと思うので、ここでの論評はやめておこうと思います。

最後に

著者自身が書いているのですが、多くの人の悩みの相談を受けているときに、こちらから答えやアドバイスを示すことは、全くといっていいほど意味がないことです。

話を聞き、同調し、相手が自ら発見してゆくのを待つ以外にない、ということです。

そういう意味で、今回の僕の記事は、本のエッセンスを抽出したつもりではありますが、こうやって抽出してしまったが故に、著者が「意味がない」としているアドバイス的なものになってしまっているかもしれません。

本の最後の「おわりに」の章では「ではどうすればいいのか」「本書で一緒に考えてまいりました」とあります。
それの示そうとするものを感覚的に感じながら、自分と向き合う、ということが、この本との正しい接し方なのかもしれません。

そういう意味で、本書の重要な点を損ねてしまったかもしれない、と思いつつ、しかし矛盾するようですが、本書がとてもよい本であることは伝えたいと思い、この記事を書きました。

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