オーボエってあまり知らなかったけど、何かの音楽ドラマで初めて聴いて好きになった、という方おられませんか?
大ヒットしたドラマ「のだめカンタービレ」で、千秋を中心に集まったオーケストラで、黒木くんがソロを務めたのが、モーツァルトのオーボエ協奏曲です。
この、華麗なコンチェルト(協奏曲)は、オーボエ好きならずとも、クラシック音楽愛好家なら知らない人がいない名曲なのですが、これ以外にもオーボエ協奏曲の名曲はたくさんあります。
今回は、それらの中から、選りすぐりの6曲をご紹介します。
ごあいさつが遅れました。こんにちは、みどるさなぎです!
前回は、オーケストラの名曲の中で、オーボエソロが美しい曲を10こ、選んでご紹介しました。
リンク:【オーボエ吹きおすすめ】オーボエソロが優雅で美しいクラシック名曲10選
まずは、おさらいからです。
オーボエとはこんな楽器です。
ダブルリードといって、葦の茎を2枚あわせにして削ったものを先端に取り付けて、息を吹きかけて音を出す、木管楽器です。
大きさはクラリネットとほぼ同じです。
吹くときには、楽器の先端(ベル)が完全に下を向いているクラリネットと違い、ベルをやや前方に向けて構えます。
オーボエ=大きな楽器 と思っていた方、もう大丈夫ですね?(これが結構いらっしゃるんです)
大オーケストラの全体の曲構成の中で、ふっとオーボエの美しいソロが入ってくるシーンは、オーボエ好きにはたまらない瞬間です。
ですが、時には、オーボエのために書かれた曲、オーボエを中心に楽曲が構成されてオーケストラが動いていく曲、というのも聴きたくなるものです。
そこで、今回は、オーボエ協奏曲というくくりで、おすすめを6曲選んでみました。
この記事はこんな方におすすめ
- オーボエってよく知らないけど聴いてみたい
- のだめカンタービレの黒木くんが吹いてたやつ、聴きたい
- あの素敵な音色が、他の曲も聴いてみたい
- オーボエの演奏にチャレンジ!フレーズを一つ吹いてみたい。
モーツァルト オーボエ協奏曲 ハ長調 K.314
一番に挙げるのは、やはりこの曲です。モーツァルトのオーボエ協奏曲 ハ長調。
そうです。黒木くんです。
モーツァルトがまだ若い頃(といっても、亡くなったのも35歳という若さなのですが)に書かれた曲です。
21歳の時の作品という説が濃厚です。
初期の楽曲はとても明るくて軽やかなのが特徴ですが、この曲もまさにそういう曲です。
オーボエ吹きにとっては最もなじみのある曲で、特にプロを目指す人は、誰もが必ず猛烈に練習する曲です。
コンクールの課題曲で、必ずと言っていいほど登場します。
オーボエは「C管」といって、この楽器のドの音はCの音(和名でいう「ハ」の音)、つまりピアノのドと同じ音です。
(「何のことを言ってるの?」と言わないでください。管楽器に限らずですが、その楽器のドがピアノのシ♭だったりファだったり普通にあるのです)
で、このモーツァルトの協奏曲の調性はハ長調なので、「C管」であるオーボエで吹くと、シャープもフラットもなく普通にドレミファソラシドで吹くことになります。
素人の僕としては、本当にモーツァルトって親切だな、と思います。
第1楽章のはじめの部分、まずオーケストラから始まって、オーボエがしばらーく待ってから、いよいよソロがスタート。
ここでなんと、「ド・ドーシド・シ ドレミファソラシドーーーーーー」って、音階のスケールから始まるのです。
これ、ただのドレミファソラシドなのですが、侮れません。かなり難しいです。
このあたりは、チャレンジしてみてつまずいた人は、「うん、うん。」と頷いてくれるはずです。
それはともかく・・・・。
話を戻して、この曲の味わいかたですが、プロの録音が非常に数多くあるので、いろんな演奏者の特徴を比べて楽しむ、ということもできます。
また、各楽章には、バックのオーケストラが止まって、オーボエが一人だけで演奏する「カデンツァ」と呼ばれる部分があります。
この時代の「カデンツァ」は、作曲者が作った譜面があるわけではなく、演奏者が独自に創造して演奏するので、各演奏者のセンスも味わえます。
いろんなプロの録音を聞くときに、このカデンツァの部分も、ぜひ楽しんでもらえたら、と思います。
リヒャルト・シュトラウス オーボエ協奏曲 ニ長調
リヒャルト・シュトラウスは「ツァラトゥストラかく語りき」や「英雄の生涯」など、交響詩を数多く作った作曲家です。
この人のオーケストラ曲は、とにかく大編成で音が分厚いものが多く、ずっと大音響でなっているイメージで、どちらかというと聴きにくい感じがします。
平たく言えば「やかましいねん!」と。
ところが、そんな中で突然ふっと曲相が落ち着いて、そこに最高に美しいメロディや、最高に美しい和音がいきなり出てきて、わーっと心がしびれる、ということがよくあります。
リヒャルト・シュトラウスのファンは、多分、そういうところに惹かれるのではないかと思います。
そういえば、リヒャルト・シュトラウスの「ドンファン」って、オーボエの美しいソロがあるんでしたね。
興味があったら、↓ の記事も見てみてください。
ただ、やはり、慣れないと、この大音響の連続はしんどい。
そういうのもあって、僕はこの作曲家は、声楽や器楽の、比較的(この人にしては)小編成の楽曲が好きです。
オーボエ協奏曲は、そういう意味でも、この作曲家の作品の中で、僕の最も好きな曲です。
他の作曲家によるオーボエ協奏曲の中でも、僕は、このリヒャルト・シュトラウスのが一番好きです。
3楽章編成なのですが、楽章間の切れ目なく、流れるように曲が進んでゆきます。
1楽章や3楽章では、ハイテンポで小難しいオーボエソロのフレーズと重厚なオーケストラが掛け合うように演奏しあい、発展させていきます。
そんな全体の動きの中、ところどころで、オーボエとイングリッシュホルン(コーラングレ)、オーボエとフルート、オーボエとヴァイオリン、という組み合わせが、ハッとするような美しい絡みであったり、ハーモニーやユニゾンを聴かせてくれるのです。
やはりこういったあたりが、リヒャルトシュトラウスの天才的な才能だと思います。
そして、第2楽章の切なく甘いメロディは、いつまでも聴いていたくなるような、珠玉の名旋律です。
紹介したい演奏は、ローター・コッホ(オーボエソロ)とベルリンフィルの名演です。
コッホは、長い間、ベルリンフィルの首席オーボエ奏者を務めていた人で、さすがにお互い知り尽くした仲とでもいいましょうか、オーケストラとは最高のコンビネーションです。
協奏曲なので、ソロとオーケストラ、というのが当たり前のイメージなのですが、この人とこのオーケストラの演奏は、全然違います。
もちろんソロを聴かせるのは当然ですが、オーケストラのトゥッティ(総奏)が出てきたときにも、惹きつけてきます。
オーボエがオーケストラに完全に溶け込み、ソリストとして浮き上がったものではなない、最高の調和を要所要所で聴かせ、僕らに感嘆の溜息をつかせてくれるのです。
バッハ ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲 ハ短調 BWV1060
オーボエ吹きやヴァイオリン弾き以外には、あまり知られていないかもしれませんが、1本のオーボエと1本のヴァイオリンのために書かれた、バッハの協奏曲の名曲です。
オーボエとヴァイオリンは、実はわりと音域が似通っているので、掛け合いをするには音域的には適しています。
とはいっても、ヴァイオリンはオーボエよりも3度下の音まで出せるし、上はどこまででも(?)高い音を出せてしまうので、本気を出されるとかなわないのですけどね。
バッハの時代のヴァイオリン協奏曲は、ソロがいてオーケストラが伴奏して、というのではなく、オーケストラの一部も担うヴァイオリンのソリストが、ところどころでオーケストラから分かれてソロパートを聴かせる、というものです。
その一方、オーボエはもちろん弦楽のオーケストラとは音色も違う別の楽器ですから、バッハの時代であってもソリストはソロ、オーケストラは伴奏、となります。
つまり、オーボエ協奏曲とヴァイオリン協奏曲では、ソリストの使われ方が全然違うものになります。
しかし、このオーボエとヴァイオリンのための協奏曲を作ることによって、バッハはヴァイオリンに対して新たなチャレンジをしたのではないか?という気がするのです。
僕の勝手な解釈なので、バッハ研究家は全然違う解説をされるかもしれません。
そのチャレンジの中で、オーボエとヴァイオリンが同じフレーズを紡いでゆく、であったり、オーボエの主旋律をバックでヴァイオリンソロが飾る、であったり、聴きどころ満載です。
ベルリーニ オーボエ協奏曲 変ホ長調
オーボエの特性、いいところを知り尽くして作られたかのような曲です。
冒頭は、弦楽器だけでなるオーケストラによる「威厳をもって決然と」と指示された序奏から始まります。
どんな堅苦しい音楽が始まるのか?と思いきや、音楽は「カンタービレ」(歌うように)の指示のもと、オーボエ独奏の優美な旋律に、聴衆をいきなり惹きつけてきます。
ここの「歌う」が、本当にオーボエのいいとこドンピシャなんです。
そして存分に歌い終わったら、突然、曲の雰囲気が一転して、軽快なアレグロに入るのです。
ここの指示は「ポロネーズ風に」。楽しくなって、聴く人も体をリズムにあわせて思わず動かしてしまいそうになります。
しっとりと歌い上げるオーボエと、軽快に踊るオーボエ。オーボエの両方の良さを遺憾なく引き出してくれる名曲です。
マルチェッロ オーボエ協奏曲 ニ短調
第1楽章の荘厳さと、第3楽章の軽妙さもとても秀逸ですが、この曲の一番の聴かせどころは、やはり第2楽章のアダージョでしょう。
弦楽器の緊張に満ちた弱奏を2小節聞いたあと、オーボエが切なく歌いはじめます。
オーボエの、憂いに満ちた、もの哀しいメロディが響き渡るその間、バックの弦楽器は、ただただ和音のリズムを刻みつづけます。
そして、オーボエのソロが終わると、曲もそのまま静かに終わっていきます。
この曲は1970年のイタリア映画「ベニスの愛」で全編にわたって効果的に使われて、広く知れ渡るようになったそうです。
僕はその映画を見たことがありませんが、さぞかし美しく儚いストーリーの映画だったんでしょうね。
アルビノーニ 5声の協奏曲集 2本のオーボエのための協奏曲 ヘ長調 作品9の3
アルビノーニには、オーボエを多く含む、いくつもの協奏曲集があって、多くの作品が録音されてCD化されています。
そのなかでも、1本のオーボエのための協奏曲として書かれた「ニ短調 作品9の2」が有名で、わりとよく演奏されたり、CDに収録されていたりします。
さっき、マルチェッロのところで紹介してくれてた、池田昭子さんのCDにも収録されていましたね。
しかし、今回はあえて、2本のオーボエのために書かれた、「ヘ長調 作品9-3」を挙げました。
とてもワクワクする曲ですよ。
躍動感あふれていて、若々しくて、曲をつくった人も、演奏している人も、「音楽が楽しい!」って感じているだろ?と思わせる曲です。
オーボエは、オーケストラ全体の中ではもちろん和音も担うのですが、オーボエだけの和音というのはあまり多用されません。
音色が立つ楽器なので、和音で落ち着いた響きを出す、ということがしにくく、目立ちすぎてしまうんですね。
しかし、複数のオーボエの和音を効果的に使うと、オーボエ本来のきらびやかさを倍増させたような効果を得ることができます。
アルビノーニは実に巧妙にこの効果を引き出しています。
この曲は出だしから、主旋律と3度下の和音を使って派手に始まります。
その後、一瞬掛け合いになったり、またすぐに3度の和音に戻ったり、と変化をつけていきます。
続く第2楽章は、うってかわって、美しく儚げな曲になります。
ここでの2本のオーボエの使い方は、それぞれの旋律を絡ませながら、それぞれに歌い上げ、響き合わせ、語り合う、という感じです。
やはり、オーボエはこう、と改めてうなずかされます。
「こう」って何って? しっとり歌って真骨頂、ということですよ。
第3楽章になると、再び3度の和音で躍動的に始まります。
第1、第3楽章と、第2楽章のオーボエの使い方の違いに注目するのも面白いですね。
まとめ
今回は、オーボエ協奏曲を6つ、ご紹介しました。
冒頭に、「オーボエ協奏曲の名曲はたくさんあります」とブチあげてしまいましたが、実は有名なところはこの6曲ぐらいで、あとは割とマイナーなんです。
これは、協奏曲、というジャンル自体が、ある時期に流行したけれども、ずっとスタンダードとして作曲対象としてあり続けた訳ではないからだと思います。
特定の時期であれば、バッハやアルビノーニだけでも、相当数の協奏曲が今も残っています。
しかし、そんな中で、オーボエの場合は、リヒャルト・シュトラウスという偉大な作曲家が、20世紀の半ばにあの秀逸な作品を残してくれたことが、偉業だと思います。
今回は、その、リヒャルト・シュトラウスも含めて、有名な6曲を紹介しました。
また時間をおいて、他の作品も書き足していきたいと思います。
もひとつ、おまけ
今回は、オーボエの素敵な協奏曲をご紹介しましたが、次のページでは、オーボエのソロが活躍するオーケストラ曲を紹介しています。よければ、こちらもご覧ください。
リンク:【オーボエ吹きおすすめ】オーボエソロが優雅で美しいクラシック名曲10選
また、素敵な曲を聴くことで、オーボエに興味を持ってくれて、「自分で吹くのにもチャレンジしてみたい!」と思う方がいたら、僕もオーボエ吹きとしてとても嬉しいです。
ではまたっ!
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