イングリッシュホルンってどんな楽器かご存知ですか?
「ホルンっていうぐらいだから、あの金ピカのグルグル巻きの楽器?」って思われる方も多そうですね。
全然違います。しかも、ホルンは金管楽器で、イングリッシュホルンは木管楽器です。
ごあいさつが遅れました。こんにちは、みどるさなぎです!
今回は、イングリッシュホルンと言われてもピンとこない方に、その魅力を耳から入ってもらいたくて、ソロのメロディが美しいクラシック名曲を6曲、選んでみました。
聴いていただいて、「あ、この音、好き」って言ってもらえたらいいな、と思います。
この記事はこんな方におすすめ
- イングリッシュホルンって良く知らないけど聴いてみたい
- オーボエの隣でシブくて美しい楽器が吹かれてた。あれ、なに?
- 「遠き山に日は落ちて」って吹いてた素敵な楽器、あれもっと聴きたい。
- オーボエが好き。その仲間ももっと知りたい。
まず、最初に。イングリッシュホルンは木管楽器です
イングリッシュホルンは、ホルンではありません。
ホルンは金管楽器で、こんなやつです。
で、イングリッシュホルンは木管楽器で、こんなやつです。
尚、教科書的には「イングリッシュホルン」としてでてきますが、よく「コーラングレ」とか「アングレ」とか呼ばれたりもします。
演奏者はそっちの呼び方の方が一般的ですね。なんとなく玄人っぽく聞こえますね。
それはわかったけど、イングリッシュホルンの名曲を、なんでオーボエ吹きが選ぶんだ?書き間違いか?
イングリッシュホルンはオーボエの仲間です。
実は、イングリッシュホルンは、オーボエの仲間です。
楽器の構造も運指(音程を決めるためのキーの押し方のこと)もオーボエとほぼ同じです。
え?オーボエって何やねん?ですって? そういう方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
リンク:オーボエを始めたい!チャレンジを迷う大人(初心者)の挑戦を応援したくて書いたブログ
リンク:【オーボエ吹きおすすめ】オーボエソロが優雅で美しいクラシック名曲10選
リンク:オーボエ吹きがオススメする、オーボエ協奏曲6選
息を吹きかけて音を出す部分を「リード」って言うんですけど、その作り方や構造もよく似ています。
(ただ、オーボエはリードを直接楽器本体に取り付けますが、イングリッシュホルンは、リードをボーカルというジョイント部分につけてから、楽器本体に取り付けます。)
演奏者も、オーボエ吹きがイングリッシュホルンに持ち替えて演奏したりします。
イングリッシュホルンをとても得意とするオーボエ奏者もいて、そういう人は「イングリッシュホルン奏者」と呼べるかもしれませんけどね。
尚、イングリッシュホルンはオーボエよりも5度、低い音がでます。
つまり、イングリッシュホルンでドの音を吹くと、オーボエで同じ指で吹いたドよりも4つ下のファが出る、ということです。
音色はオーボエの明るい音とはやや異なり、すこしくぐもったような、シブい音色です。
じゃ、オーボエを練習すれば、イングリッシュホルンも吹けるようになる、ということね?
まあ、そうです。
ただ、やってみると、いろいろ勝手が違うことはあります。(まず、息の通りが違うので、吹き込みの感覚にびっくりします)
それと、オーボエとイングリッシュホルンの間の音域で、オーボエダモーレ という楽器もありますよ。
あんまり、オーケストラでは多く使われないですけどね。有名な曲では、ラヴェルの「ボレロ」で使われています。
音色はさらにシブくて、オーケストラではほとんど出てこないので日本ではめったに見かけないですが、ヨーロッパでは、古い教会音楽とかで重宝されるみたいです。
イングリッシュホルン(コーラングレ)が活躍するクラシックの名曲
オーボエ属のうんちくを語り始めるとキリがないから、いいかげんに、イングリッシュホルンのおすすめ曲にいきましょう!
ドヴォルザーク 交響曲第9番 「新世界より」 第2楽章
この曲「新世界より」は、第4楽章冒頭の金管の鮮烈な出だしが有名で、誰もが聴いたことのあるものだと思います。
一方、第2楽章は、メロディは誰しも知っているものの、これがドヴォルザークの交響曲の中にあるものだということは知らなかった、という人も多いかもしれません。
「家路」というタイトルの曲で、小学校の音楽の時間で、「遠き山に日はおちて」という歌詞で歌ったことで、皆さん記憶しているのではないかと思います。
も、もしかして、昭和世代まで、かも知れん・・・・。
これ、実際、イングリッシュホルンで吹いてみると、最初の方は気持ちよく吹けるのですが、ソロの終わり近くの最高音(第2オクターブのドまで出てくる)が、細ーい音になってしまうんですよね。
一番盛り上がるところなのに、一番、か細くなってしまう・・・。このあたりが素人の悲しいところです・・・・。
ちゃんとしたプロの演奏は、もちろんそんなことないですよ。
ラヴェル ピアノ協奏曲 ト長調
この曲は、第1楽章と第3楽章はとても「はっちゃけた」曲です。
のだめカンタービレの第20巻で、主人公ののだめが、「のだめ、すっごくいい曲、聴いちゃったんデス!!」ってすごくはしゃいでたやつですね。
その、前衛的な、というか、猪突猛進的な、というか、とにかく元気大爆発な2つの楽章にはさまれ、しかしそれとは対照的に、胸がきゅーーんとなるような、とても美しくて素敵な部分が、この第2楽章です。
イングリッシュホルンの美しいメロディの上に、時に近づき、時に離れながら、優しくかぶさってくるピアノの響きには、うっとりせずには居られません。
シベリウス 交響詩「トゥオネラの白鳥」
9分間ほどの曲の間のほぼすべてを、イングリッシュホルンが歌い上げる名曲です。
シベリウスが作曲した交響詩で、死の川トゥオネラに浮かぶ白鳥の姿を描写しています。
イングリッシュホルンは死に瀕した白鳥を表現し、不気味でもあり、悲しく美しくもある旋律を響かせ、聴く人の心を惹きつけて離さない、不思議な雰囲気の曲です。
レスピーギ 交響詩「ローマの松」より「アッピア街道の松」
イタリアの作曲家、オットリーノ・レスピーギは、20世紀の初頭に、「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭り」という「ローマ三部作」と呼ばれる三つの交響詩を書いています。
この中の「ローマの松」において、「ボルゲーゼ荘の松」「カタコンベ付近の松」「ジャニコロの松」に続く、最後の部分として「アッピア街道の松」が登場します。
ちなみに、アッピア街道とは、紀元前にローマ帝国によって建設された街道で、そのあと延長や修復をくりかえしながら現代にまで至り、当時の石畳の面影を今に残す遺跡として知られています。
曲は、遠くから聞こえる、静かな進軍ラッパの音から始まり、軍楽調の音楽が執拗に繰り返されながらどんどんクレッシェンドして盛り上がっていき、トランペットのファンファーレが舞台からも客席からも(バンダといいます)鳴り響き、フォルティッシモのなかで、勇壮に曲が終ります。
イングリッシュホルンは、その冒頭に近い部分で、街道の歴史を思わせるミステリアスな調べを、ムードたっぷりに聴かせてくれます。
ロッシーニ ウィリアムテル序曲
5本のチェロのハーモニーでロマンティックに始まり、後半はトランペットのあまりにも有名なファンファーレから軍楽調の壮大な展開をしてゆく、とてもダイナミックな曲ですが、これら二つの全く異なる雰囲気をもつ前後を、美しい中間部で結び付けてるのが、このイングリッシュホルンのソロの部分です。
のだめカンタービレの第16巻で、粘着質のこだわりに火が付いてしまった指揮者ちあきが、楽団員の疲労と重い空気にさらされながら奮闘するシーンで、イングリッシュホルンのソロをオーボエの黒木くんが奏でる、あの曲ですね。
このソロの部分は、イングリッシュホルンとフルートという、少し変わった組み合わせの2つの楽器が、とても効果的に絡み合いながら、牧歌的でいて、明るく希望が広がるような旋律を聴かせて、このあとの勇壮なファンファーレへとつなげてゆく、とても重要な部分になります。
マーラー 交響曲第2番 「復活」
この曲の第1楽章は、不気味で衝撃的な出だしの後、すぐに重苦しい葬送行進曲につながります。
途中、何度か美しい光景が開けるかのような箇所があるにも関わらず、またすぐに暗く重苦しい世界に引き戻されます。
そのような繰り返しのあと、冒頭から6分ぐらいのところで、夜明けを思わせるような、場を転換させるメロディがイングリッシュホルンによって奏でられます。
それに導かれる希望に満ちた雰囲気もやはり長続きはせず、またまた不気味な足音のような刻みが始まったあと、イングリッシュホルンとバスクラリネットのユニゾン(同じ音を複数の別の楽器が奏でる)による新たなテーマが登場します。
ん?ユニゾン?てことは、ソロと読んだらいけない? ま、いいか。
もの寂しいような、諦めたような、決して元気がでるようなものではないこのメロディを、ずっしりとしたバスクラリネットに支えられながら、イングリッシュホルンの素朴な音色が、諦めのメロディを淡々と奏でてゆくのです。
まとめ イングリッシュホルンが素敵なソロを聴かせるクラシックの名曲たち
イングリッシュホルンの素敵なソロのあるオーケストラ曲を6曲、集めてみました。
いずれも、イングリッシュホルンの素朴な音色を活かした、とても美しいメロディを含んでいます。
どれか、気になった曲があれば聴いてみてくださいね。
そして、聴くだけじゃなくて、自分でもこの美しいメロディを奏でてみたい、と思った方はぜひチャレンジを。
ただ、イングリッシュホルンはオーボエよりもだいぶ高価ですし、最初に書きましたが、オーボエ吹きが持ち換えて演奏することが多いもの。
まずは、オーボエにチャレンジして、その後で、さらにやりたくなったらイングリッシュホルンに手を伸ばす、というのがいいかもしれません。
次の記事もぜひ読んでみてください。
リンク:オーボエを始めたい!チャレンジを迷う大人(初心者)の挑戦を応援したくて書いたブログ
では、またっ!
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