中学や高校時代に部活のブラスバンドでクラリネットを吹いていた、という人は、結構たくさんいます。
大勢で一つのパートを吹いて、みんなとの一体感を楽しむ、という、素敵な経験をしてきたことと思います。
しかし、その一方で、埋没してしまうことのつまらなさや、少しぐらい吹けなくても大丈夫というサボり心に苛まれたこともあるかもしれません。
ごあいさつが遅れました。こんにちは、みどるさなぎです!
ブラスバンドでクラリネットをやってきた人の中には、もしかしたら、クラリネットの本当の素敵さを知らない人もいるのでは?と思います。
そんな人にとって、オーケストラの中で活躍するクラリネットに触れたときの驚きは、すごいものです。
今回は、クラリネットの魅力をオーケストラの曲の中でいかんなく発揮する、クラリネットソロが美しいクラシック名曲を10曲、ご紹介します。
この記事はこんな人におすすめ
- ブラスバンドでクラリネットを吹いていたことがある
- クラリネットが大好き、もっと深く知りたい
- クラリネットって本当はもっとすごい楽器?
- オーケストラの中で際立つクラリネットを聴きたい
オーケストラの中では、クラリネットも含めて木管楽器(特に1st)は、ほぼソリストと言っていい位置付けです。
全体の響きのなかで果たす役割もさることながら、ところどころにその楽器ならではの特徴を存分に生かした、ソロの部分がちりばめられています。
どの作曲家も曲の中で抜群の使い方をするので、ただ「クラリネットが美しい」というだけの基準では、素敵な曲がありすぎて選ぶことができません。
今回は、比較的長いソロに注目して、クラリネットソロが美しい曲を選んでみました。
ヴェルディ 「運命の力」序曲
衝撃的な金管の動機ではじまる、有名な序曲です。
ヴェルディのオペラ「運命の力」の一部ですが、序曲だけが単独で演奏されることも多いです。
1861年に初演されましたが、1869年に大改訂され、この序曲もそのときに今の形に完成したそうです。
金管の3つの強音でセンセーショナルに始まったあと、ミステリアスでおどろおどろしいテーマが続きます。
その後、突如、木管たちによるメソメソした旋律に変わります。
さらに目まぐるしく、曲調をかえてゆきながら、進んでゆき、開始から3分30秒ほどたったところで、全休止の中で、木管楽器が予感的なモチーフを交代に奏でます。
クラリネット、オーボエ、フルートの順に出てきます。
そして、静まり返った後、クラリネットによる艶やかで美しい、長いソロが始まります。
オペラの中では、主人公の一人、レオノーラが、身の回りの不幸を経て、洞窟で独り神に身を捧げる生活をしようと決意し、神を賛美する歌がこのメロディーです。
ドヴォルザーク 交響曲第7番
ドヴォルザークがアメリカにわたるよりも7年前、1885年に完成した交響曲です。
交響曲第9番「新世界より」ほどではありませんが、第8番と並んで演奏会でしばしば取り扱われる曲です。
この曲の第2楽章がクラリネットのソロから始まります。
この交響曲全体としては、激しく躍動的な部分が多いのですが、唯一、第2楽章の前半はやさしく穏やかです。
その穏やかなポコ・アダージョの冒頭を、クラリネットのソロが先導していきます。
どこかなつかしさを感じさせるようなこのメロディーは、いかにもドヴォルザークらしいという印象を与えるものです。
チャイコフスキー 交響曲第6番 悲愴
美しい旋律が有名な第1楽章で、クラリネットがとても良い使われ方をしています。
第1楽章の終了2分前ぐらいのところです。
この楽章を通して、はっとするような美しい主題が、弦楽器の重厚な音色で繰り返し登場し、厚い響きとメロディラインに圧倒されます。
その第1楽章がいよいよ終ろうとするとき、繰り返し使われてきた主題が、クラリネット一本が寂しく切なく歌い上げ、この楽章をしめくくるのです。
ラフマニノフ 交響曲第2番
第3楽章で、弦楽器による序奏のあと、クラリネットの長大なソロが始まります。
ラフマニノフならではのメロディラインの美しさを、クラリネットが一身に背負って延々と歌い上げていきます。
これはもう、天国から舞い降りてきたような美しさです。
ラフマニノフにあまり馴染みのない人でも、これを聞くと大ファンになるんじゃないかと思います。
そして、このソロの部分だけを聞くと、もう、もはやクラリネット協奏曲にしてしまってもいいんじゃないか?とすら思えるぐらい、クラリネット良いですね。
しかし、その後、弦楽器の総奏が引き継いでこの旋律を厚く響かせるのを聞くと、やはり、素敵な交響曲の重要な一部であった、ということを改めて感じさせられます。
尚、ラフマニノフには他にも、クラリネットの音色を活かした、とても美しいソロを持つ楽曲がたくさんあります。
ピアノ協奏曲第2番の第2楽章の最初の方にで、ピアノのアルペジオに乗せて主題を提示するクラリネットソロも、とてもいいですね。
プロコフィエフ ピアノ協奏曲第3番
第1楽章自体はピアノが入ってくるところからは、極めてハイテンポで躍動感に満ちた曲で、いかにもプロコフィエフ、という曲なのですが、その導入が美しく、予感的な感じから始まります。
その冒頭がクラリネットのソロから始まります。
セカンドクラリネットも加わって、丸い音色の美しいハーモニーが聴かせどころです。
ピアノが入った後の熱狂的な曲感を全く予測もさせないような、美しい出だしが、「お、クラリネット、やってくれたな!」という感じです。
シベリウス 交響曲第1番
第1楽章の冒頭が、とても長いクラリネットのソロです。
シベリウスらしい、真冬っぽい暗い雰囲気をもちつつも、美しくてはかなげなメロディを、静寂の中でクラリネット一本で歌い上げます。
この、かなり長いソロが終ると、テンポと曲想を変えて、オーケストラの総奏がはじまり、高らかなファンファーレ風の曲にはいっていきます。
この部分以降は、これまたシベリウスらしく、ずどーん、ズドーンといった重い感じの曲です。
冒頭のクラリネットはこれを導くまでの、つかみの部分なのですが、これから何が始まるんだろう、というドキドキを聴衆の心にかきたてます。
メンデルスゾーン 交響曲第3番
ここまではしっとりと歌い上げる曲を多く取り上げて来ましたが、クラリネットの魅力は「しっとり」だけにはとどまりません。
この曲の第2楽章の冒頭で、クラリネットの明るく躍動的なソロがあります。
粒がそろった、気持ちよく転がるような軽妙な旋律が聞かせどころです。
「スコットランド」というこの曲の副題は、メンデルスゾーン自身がスコットランド旅行中にこの曲を着想したから、ということです。
第2楽章のクラリネットソロは、まさにそのスコットランド民謡を彷彿とさせるものです。
【スコットランドの美しく牧歌的な景色が頭の中に浮かび上がりますね。
モーツァルト 交響曲第39番
「しっとり」ではない系のソロをもう一曲、ご紹介です。
穏やかながらもゴージャス雰囲気を醸し出すソロも、クラリネットは得意です。
となると、モーツァルトとの相性は抜群です。
モーツアルトの後期の3大交響曲の中に、クラリネットの素敵なソロがあります。第39番です。
交響曲第39番の第3楽章は3部形式(A-B-A)のメヌエットになっています。
冒頭の、オーケストラによる祝典的な総奏(A)に続いて、場面が変わって(B)登場するクラリネットソロは、素朴で明るくて、幸せな気分になるメロディーです。
第3楽章の開始2分ぐらいで、トリオ(B)に入った冒頭が、クラリネットによるソロによる有名な旋律です。
そのクラリネットのメロディーのリフレインをフルートが担い、甘美な音楽を紡ぎ、その後、対をなす別の美しいメロディーを弦楽器が担います。
再び、クラリネットとフルートの掛け合いによる甘美なトリオ第1主題に戻ったあと、冒頭の、オーケストラの総奏による祝典的な旋律(A)に戻り、あっさりと第3楽章が終ります。
レスピーギ ジャニコロの松
レスピーギが1916年から1928年にかけて作曲した、ローマ三部作(ローマの噴水、ローマの松、ローマの噴水)の中にその曲はあります。
ローマの松は、「ボルゲーゼ荘の松」「カタコンバ付近の松」「ジャニコロの松」「アッピア街道の松」という4部から構成されています。
レスピーギの曲は、このジャニコロの松に限らず、管楽器のソロを実に効果的に多用します。
例えば、「ジャニコロの松」に続く「アッピア街道の松」では、イングリッシュホルンがとても魅惑的なソロを響かせます。
ジャニコロの松は、クラリネットの舞台です。
満月の中に浮かぶ松と幻想的な月光、というイメージを、クラリネットの物哀しくも幻想的音色が余すところなく心に描かせるのです。
R・コルサコフ スペイン奇想曲
最後に陽気なポルカ風のソロをご紹介します。
クラリネットには、有名な「クラリネットポルカ」という曲があるぐらいです。
話がどんどん逸れますが、「クラリネットポルカ」自体は、いつごろ誰によって書かれたのかもはっきりしていません。
クラリネットの粒のそろった丸い音色や、早いパッセージを吹いたときのコミカルな響きが、とてもポルカとの相性がいいです。
ただし、我々が知っているポルカの曲調に似ているとはいえ、この曲自体はその名も「スペイン奇想曲」。
あくまでスペインに着想を得た曲です。
このクラリネットソロを含む第1曲は「アストゥリアの舞曲 アルボラーダ」という題名がついています。
アストゥリアとは、スペインのほぼ最北端の週です。
おまけ ショスタコーヴィチ 祝典序曲
10曲に絞ってご紹介するつもりでしたが、やはり、次々と素敵な曲が浮かんできてしまい・・・・。
おまけとして、ショスタコーヴィチの祝典序曲をご紹介します。
壮大なファンファーレからはじまり、その後、アップテンポで躍動的なパッセージで最後まで突っ走る、といった曲です。
その、超スピードに入るところの冒頭がクラリネットから始まります。
曲の開始後、1分すぎぐらいのところです。
オーボエ吹きである僕からみれば、クラリネット奏者って、よくあんなに指がまわるもんだと感心します。
いかにも、ここから動きだしますよ、という導入にふさわしいのが、クラリネットの音の粒と丸く軽やかな音色だと思います。
幸福感と栄誉にみちたファンファーレと、クラリネットソロから始まる、終始明るく活発な音楽を聴き終わると、とても幸せな気持ちになります。
まとめ オーケストラの中でのクラリネットは素敵
ブラスバンドでのクラリネットの使われ方とは全く違い、オーケストラでは、全楽器をバックにして1本の楽器で歌い上げる、すてきな「ソロ」があちこちに登場します。
紹介した11曲は、クラリネットの魅力を発揮する数多くのオーケストラ曲の中の、ほんのほんの一部です。
ボリュームとダイナミクスとアンサンブルを聴かせるのが中心の、ブラスバンドでのクラリネットとは使われ方が全然異なります。
どちらも素敵なので、ブラスバンドのクラリネットも、オーケストラのクラリネットも、どちらも好きになっていただければと思います。
もちろん、ピアノと一緒にやるソナタとか、何本かのクラリネットでやるアンサンブル、木管アンサンブルなども好きになってくださいね。
では、またっ!
関連記事:イングリッシュホルンのメロディが美しいクラシック名曲6選
関連記事:フルートのソロが美しいクラシック名曲7選
コメント